「やどらんは、いつの時代へ行ってみたいんぢゃ?」
 
「ボク、あこがれの『安土城』のホンモノを見てみたい!で、できれば
織田信長公に乱世を生き抜く秘訣、みたいなことを聞きたいな。」
 
「わかったぴょん!1582年の近江国、安土へ!さあ行くぴょん♪」
 
 
まもなく、琵琶湖のほとり安土山の山頂に、青空に燦然と輝く
天守建築が見えてきました。
 
「ああ!これが?ホントの姿を知りたくて、泣きそうになったこともある
安土城』なの?」
 
「コラ~~!余の城の上を、かってにフラフラするとは無礼千万!サテワ
毛利方の間者か!こっちへ参れ、すぐ参れ!」
 
「・・・?  だれかてっぺんでさけんぢょる。甲高い声ぢゃのう」
 
   
いわれた通り「ちゃがま号」は天守最上階に横付けすると、甲高い
声の殿様は、やどらんたちに中に入るよう命令しました。
 
「ハテ、面妖なる乗り物。その方ら、何者か。名乗れ!」
 
「あの、なんていうか、ボクら未来から来たんだよ!ボク、やどらん。
お殿様、もしかしてこの安土のお城の城主、信長さまですか?」
 
「余か?ここは安土城で、余があるじである。名のるまでもなかろう。」
 
やどらんたちが未来から来たことを告げ、通信機や宇宙服を見せると
信長公は眼をマンマルにして驚きました。
 
「確かに、このようなものはこの時代にはありえぬ。」
 
「戦国の世はやがて終わり、日本は統一国家になります。」
この時代の歴史について、知っていることを正直に話すと、
意外にも信長公は信じてくれたようです。
 
「そうか、遠路はるばるご苦労である。天下は近く統一されるという
その方の言葉、信じよう!当然、余が統一するのだな?」
 
やどらんは、少しためらったあと、おそるおそる言いました。
「・・・お殿様は、まもなく謀反で亡くなるのです。」
 
「おお、なんと!・・・そうなのか」
 
ぽぽりんたちは、信長公が怒って手打ちにされるかとびくびくして
見ていましたが、やがて信長公は思いのほか静かな声で言いました。
 
「その方ら、いっしょに『人間50年』を舞ってはくれぬか」
 
 
      人間50年。化転のうちを比べれば、夢幻のごとくなり。
ひとたび生を受け、滅せぬもののあるべきか
 
 
「人間は、生まれた以上誰もが必ず死ぬのだ。だとすれば、いつ死んでも
後悔しないよう、いつも全力で生きるべきだ!『あの時、ああしておけば』
とか、『もしこうできたら』とか思わないためには、可能なことはすべて
やる。魔人とか言われてもやる、という歌だと余は解釈しておる。」
 
「いつの時代でも成り立つ考え方じゃないかもしれませんね。でも、
乱世は殿を必要としています。最後まで殿らしくがんばってね。」
 
「やどらん、おぬしは正直ものだのう。その扇、持って行ってよいぞ。
どれ、もう一回舞おうではないか」
 
 
 
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