「次のテーマは、異時同図法でござるッ!」
伊19号から気合十分に、しかし淡々と伝えられる次のポーズの
テーマに、星姫様はことのほか狼狽した様子です。
「異時同図法・・・絵巻物等で見かける、1つの背景に時間帯が
違う2つ以上の場面を表現する技法ね。同じ人が画面上に複数
登場するのが特徴だけど、これは、描写する側の技法で、生身
の人間のポーズで分身を表現するのは、正直言って・・・」
不可能という言葉を飲み込む星姫様を見て、クリス大佐も伊19
号に抗議します。
「光学式着艦制動装置って、着艦する機体が実現可能な姿勢
を基に設計されてなきゃおかしいでしょ!」
「お二方の仰りよう、もっともでござる。このテーマは、ある程度
前後長のある艦載機が、フレームへ機首が入ってから尾翼後
端が抜けるまでに、最低一回ローリングで姿勢を変えるだけの
簡単なテーマでござるが、お二方の前後長では無理でござる
か?」
「・・・わかったわ。星姫様、しばしの辛抱よ。御免!!」
シュバッ!シュババッ!
フレーム通過の瞬間、クリス大佐は星姫様の腰のあたりをがっ
ちりつかんで、内蔵ロケットモーターを最大出力で2回噴射
しました。
ズビュビュビュゥmmmm・・・・・
「うおおお!フレーム通過の瞬間で、3つのシーンを演じきった
でござるか!?信じられないでござる・・・」
口をあんぐりと開きあっけにとられる伊19号の目の前の速度計
は、相対速度が最初より8%減速したことを示していました。
「う、ううう・・・」
急加速で脳震盪を起こしかけた星姫様をかばいながら、2人は
最初に比べかなりゆっくり近づいてくる次のフレームへ向け
再び身構えました。
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