「なるほど、君たちはこのアリス亜空間からの脱出方法を知る人を探して
いるんだね。」
 
帽子屋の言葉に、アリスとうさぴーは大きく頷きます。
 
「わかったよ。簡単ななぞなぞを出すから、正解できたら脱出方法を知って
いそうな人を紹介してあげよう。」
 
「わあ、なぞなぞですか!」
アリスは興味津々な様子で身を乗り出します。
 
「いいかい?

 1.飛んでいる矢は、飛行中のある瞬間、空中のある地点に静止している。
 
 2.次の瞬間も、空中の別の地点に静止している。
 
 3.ある瞬間と次の瞬間の間には無限に瞬間が存在している。
 
 4.従って、ある一瞬の矢の速度は無限にゼロに近い。
 
 5.ゆえに、飛んでいる矢は止まっている。
 
 問題:この論理のどこに矛盾がありますか。

 
 
「え〜、、飛んでいる矢が止まってるわけないでしょ。」
アリスは、当惑した表情でつぶやきます。
 
「簡単だぴょん!有名なゼノンのパラドックスだぴょん。」
うさぴーが得意げに言います。
 
「矢のスタート地点とゴール地点との間の飛距離は、無限ではなく有限だぴょん。
有限の距離を無限の地点に分割する事はできるけど、有限の距離は無限の地点を
積み上げたものではないんだぴょん。ゆえに、飛んでいる矢は有限の距離を移動
している、つまり動いているんだぴょん!」
 
「なるほど、なるほど。」
帽子屋たちは、満足げにほほ笑むと、空中を指さしました。
「ほら、あの矢をごらん。静止画の連続のように見えないかい?」
 
「あぁ、あれはGIFアニメで表現されてるからでしょう?」
アリスが尋ねると、さもありなんと言うように、帽子屋は頷いて言います。
 
「オーケー、僕ら自身GIFアニメ内の存在だろう?僕らにとって、これは現実という
大前提を否定しては、物語が成立しないじゃないか。」
 
「なんてことだぴょん!ぼくらは今、ゼノンのパラドックスが真実として成立してしまう
世界に来ているぴょん!?」
 
アリスとうさぴーは、なんだか混乱してきました。
 
 
 
 
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