ユウ中佐、こちらへどうぞ!」
 
戦艦チョモランマの艦内を電探室へと急ぐユウ中佐は、戦闘艦橋の前で緑色の髪の
クリス型アンドロイド3号機、モリス大佐に呼び止められました。
 
「モリス大佐!大変、大変!クリス大佐とトリス大佐が!!」
 
「落ち着いてください、ユウ・オートモ中佐。2人の捜索のために、すでに突撃艇が二個
小隊出動しました。でも・・・・もしも捜索隊が追いつけなかった時のために、リモート
接続を使って2人の救出を試みてみましょう!」
 
「わかりました・・・・・・・ていうか、これはいったい!?」
 
訝しげな表情でモリス大佐の後から戦闘艦橋に踏み込んだユウ中佐は、壁いっぱいに
設置されたモニターに映しだされたクリス大佐の姿に、少し驚いた様子でたずねます。
 
「今、チョモランマのコンピューターが無線回線でトリス大佐の電子頭脳にアクセスして
います。この画像は、トリス大佐の光学センサーからの映像、つまり2人は向き合った
姿勢で漂流しているようです。」
 
「光学センサーが作動してるってことは、少なくともトリス大佐は無事ってこと?」
 
「ハード的には、大きな損傷はないようですね・・・。衝撃で電子頭脳がシャットダウンして
しまったため、現在再起動シーケンスがスタートしたところのようです。エネルギー系、
手足の駆動系、システム系のハードウェアチェックの後、記憶データ、AIソフトのチェック
がすべてOKだったら、電子頭脳が立ち上がってトリス大佐は目を覚ますでしょう。」
 
「トリス大佐が目をさましたら、内蔵ロケットで減速するとか、連絡をとり合って救出方法
が見つかるかも・・・・・わかりました。やってみましょう!」
 
ユウ中佐は、希望をとりもどした様子でじっとモニターを見つめます。
 
 
駆動系チェック・・・肘関節:機能正常・・・肩関節:機能正常・・・
 
「それにしても・・・・・・」
 
淡々とハードウェアチェックが進む中、ふとユウ中佐がつぶやきます。
 
「どうしました、ユウ中佐。何か気がかりな事でも?」
 
「いえ、ただ・・・・モニターのクリス大佐を見てて、思ったんだけど・・・・」
 
ユウ中佐が言いよどむと、怪訝そうにモリス大佐が振り向きました。
 
「クリス大佐って、すごくきれいだな〜って、、」
 
「・・・・・そうですね。同じ顔・同じ姿の私たちクリス型アンドロイドから見ても、クリス
大佐は格別に美しく見えます。」
 
「あ、そうそう、もちろんモリス大佐もきれいです!!わたしは、クリス大佐やモリス
大佐が、こんなに美しいのになぜ戦闘用アンドロイドなのか、ちょっと不思議な気が
して、、」
 
ユウ中佐のことばに少し苦笑しながら、モリス大佐が答えます。
 
「私を口説いてるんですか?それともからかってるんでしょうか。でも、そういえば、
クリス型アンドロイドは元々戦闘用に開発されたんじゃなかったという説を聞いた
事があります。」
 
「わあ!ほんと??」
 
「これから、トリス大佐の再起動シーケンスの中の、記憶データチェックのステップが
始まるから、もしかしたら私たちの知らないクリス型アンドロイドの歴史が見られる
かもしれません。」
 
興味津々のユウ中佐とモリス大佐が見守る中、モニターの映像は一旦真っ暗になっ
た後、トリス大佐の記憶データが過去から順に映し出され始めました。
 
 
 
 
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