「うををを〜！！たすけてくれい〜！」   「ぽぽりんサン、シッカリ！」   うろたえ泣き喚きながら宇宙空間を飛ばされていくぽぽりんの左手を 内蔵の小型ロケットで追いかけるトリス大佐がようやく捕まえました。   「をを・・・トリス大佐、ありがとう！ワシをチョモランマに戻してくれい」   今にも泣きそうな目をしてヒッシに手を握り返すぽぽりんを見ながら、 トリス大佐は合成音声を精一杯自然なトーンにして答えます。   「ぽぽりん、クリスからの無線で、チョモランマは沈んだって・・・艦隊は 全速で戦闘航行中だから、私のロケットじゃ追いつけないわ。」   「・・もう艦隊に帰れんの？ワシらここで死ぬの・・・？」       「あきらめちゃだめよ、ぽぽりん。宇宙空間では、諦めた瞬間に死が決まるの。」   トリス大佐の落ち着いた眼差しに、ぽぽりんも冷静さを取り戻しました。   「私たちはものすごいスピードで、太陽系中心方向に飛ばされているわ・・ 火星よりも地球の方が近いけど、大気圏突入装備がないから地球に降りるのは 無理ね。月面基地ならなんとか・・・おおむね５日の距離かな」   「ワシ、酸素が４８時間分しかない・・・やっぱり死ぬんぢゃ〜！！」   宇宙服の酸素残量をチェックしたぽぽりんがガックリうなだれると、トリス大佐が 励ますように言いました。   「ゆっくりと温度を下げて、冷凍冬眠モードにすれば充分もつわ。だいじょうぶ、 私が月面基地まで連れて行くから」   「でも、トリス大佐もケガしちょるみたいぢゃけど・・・」   「スイッチパネルのフタが、衝撃で取れちゃっただけ。心配しないで・・、さあ急 がないと酸素がどんどん減っていくわよ」   トリス大佐のことばで意を決したぽぽりんは、宇宙服の首のスイッチを冷凍 冬眠モードに切り替えると、間もなく深いふかい眠りに落ちていきました。         もどる       Topへ       すすむ