もも十字タワーに待避した諸尾博士は、追いつめられてはいたものの、とても
冷静に状況を分析していました。
 
「私が、人類さいごの一人なのか・・・?もう打つ手はないんだろうか?」
 
そこはタワーの電送室で、電送機が低いうなりをあげて動作しています。
 
 
「いいや、ある!まだ戦えるぞ・・・」
 
電送機を見て作戦を思いついた博士は、大急ぎで機器を操作し始めました。
 
「人間を移動する電送システムは、事故にそなえて全ての電送内容が保存
される仕組みになっている。これは、通信トラブルで人間が消滅してしまっ
ても、ログから復活させるためのものなのだ!
 
電送サーバに蓄積されているログにアクセスできさえすれば、何万人のも
人間を再生できる。まだチャンスはある!」
 
再生操作を続けながら、フト考えます。
 
(シカシ・・・  そうしてエンジェルに勝った場合、ログから再生した人たちは
オリジナルと2人存在する事になってしまう。厄介な問題を生み出すぞ・・・)
 
モニターに、アクセス成功の表示が現れました。
 
「それでもヤル!多少問題がおきても、人類の英知で必ず解決できるはずだ。
今は、ヒトが絶滅するかどうかの方がズット大きな問題のはずだ!」
 
 
 
最後のキーを押そうとしたとき、諸尾博士は足元に何かが絡みつくのに気が
つきました。
 
 
「うおお!い、いかん!」
 
装置の合間から這い出たエンジェルの末端は、アッという間に博士を同化し始めます。
 
「く・・・  負けるものか・・・」
 
痺れたように動かなくなっていく腕をヒッシで伸ばし、博士は最後のキーを押しました。
 
 
 
 
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